Photographs by acane
AORファンのみならず渋好みの音楽好きをも魅了する、希代のシンガー・ソングライターがまさに待望の来日。70年代のLA感溢れる爽やかなアコースティック・サウンドの美メロながら、通奏低音としては意外な程にしっかり黒いソウルフル・グルーヴが流れる独特なソングライティング、更にまぶしい程に蒼く青年らしいハイトーン・ヴォイスで少し気難し気味な歌詞を歌う、という振れ幅がたまらない魅力で不安定な青春期の青年性そのものが大きな魅力だった。そんな彼の60歳を超えての今回のステージには正直、期待と不安の入り混じる心境……。
舞台に立った姿は驚く程リラックスした普段着で年齢相応に地味な男性であり、ギターをかけかえる度に丁寧なチューニングに時間をかけ、特に話術に長けた風でもない真面目MCにしろ、どちらかといえば主役としてのスター性アピールがない(失礼!)。
それが一度演奏に至るや、全ての不安は吹き飛び素晴らしいパフォーマンスに目を見張る。近年ヴィンテージ楽器を集めて過去の自作品のアレンジを全て見直す作業に没頭したという職人気質こだわり派のネッドに選ばれたバンド・メンバーは超一流。ヴァン・モリソンやプリンスのあの名曲を支えた腕っこき達がタイトにファットにグルーヴを刻み、奇跡的にまだ思春期のような蒼さをたたえた彼の歌声がこの演奏にのる気持ちよさは極上。ベテランにありがちな技量アピール的トゥー・マッチさの全くない、成熟を拒んできたかのようなヴォーカルが、洗練を極めた演奏にまさにピッタリくるのだ。アヴェレージ・ホワイト・バンドやチャカ・カーン等にカヴァーされた美メロ・ミドル・グルーヴの名曲達が更に大人っぽい装いで次々と甦る。アンコール「Whatcha Gonna Do For Me?」では限界までスローに落としても尚跳ねるグルーヴに永遠に浸っていたくなった。終焉後ステージ・バックに現れた夜景も相まって余韻が後を引くのが〈ビルボードライブ東京〉の素敵なところ!(増井志乃)






